褥瘡との闘い

褥瘡との闘い

要介護5の高齢者を介護していて、必ず問題となって出てくるのが褥瘡と呼ばれる皮膚の疾患だ。
昔は床擦れとか言っていたと思うが、この褥瘡、寝たきりの人の皮膚が擦れてできる床擦れから来るイメージとはわけが違う。

厄介な褥瘡は、赤く剝けてしまうだけでは終わらない。
なんと!
肉が溶けて陥没する!
トンネルのような穴が開く!

実際に患部を見てみると、3mm以上の深さまでえぐれていて、皮下組織より下まで行ってるのではないか?皮膚疾患というカテゴリーを越えてしまってるのではないかとまで思ってしまう。

前任者のええかげんな介護のために、最悪の状態になった両親。
その後を引き継ぎ、肉が陥没した褥瘡も、トンネルになってしまった褥瘡も、すべて完治させたので、今回はその辺りの生々しいところを書いて残したいと思う。

最初にネットで調べた褥瘡ができるメカニズムをそのままコピペすると、
「皮膚の一定部位に圧迫が加わると、皮膚および軟部組織の血管が圧迫されて血流が途絶えます。 特に骨突起部には体圧が集中しやすく、圧力および応力による循環障害が増大します。 このような阻血(そけつ)状態が一定時間以上続くことにより不可逆的な組織壊死が生じて褥瘡となります。」

わかりにくい!

簡単に書くと、
「褥瘡は擦れてできるもの言うよりも、血液の循環障害からできる、表皮、真皮を越えた皮下組織以上まで壊死してしまう恐ろしい疾患であるということ。」

[重度の認知症の母にできた褥瘡]
動き回る母に何故?褥瘡ができたのか?

重度の認知症の母はじっとして様子はない。ベッドでも常に動き回る。
よくよく調べてみると、前任者は施設に拘束帯を供与していた。
母の介護を引き継いだ後、ベッド用と車いす用の2つを施設から回収した。
危険防止のために使ったというのと、褥瘡ができるまで動かないようにするのとは意味が違う。

可哀想に!

さて、褥瘡の治療だが、
褥瘡は回復の過程で、壊死組織を取り除いてやらないと、新しい組織が再生できない。
ハサミで切り取るのも良いが、重度の認知症の母が理解してじっとしているわけもなく、治療時に暴れることのを考えると自然にはがれるようにする軟膏を塗ることの方がよりベターということだった。
その名もブロメライン、パイナップルの酵素を使っているらしい。素晴らしい薬だ。
写真を2枚載せるが、1枚目の写真の黒い部分、2枚目の写真の白い部分が壊死した組織で、ここに軟膏を塗ると、ベロッと剥がれてくる。

黒い壊死組織(治療開始初期)


白い壊死組織(治療中期)

浸潤液が出ている部分には膿まないように、ポピドンヨード配合のスクロードパスタ(メグミンシュガー)を塗る。

あとは、日にち薬で、どんどん良くなっていく。

[寝たきりの父の褥瘡]

寝たきりだと簡単に褥瘡ができそうな気がするが、最近はそうでもなく、エアマットで体重分散をこまめにしてくれる優れものがある。
前任者もそういうマットを敷いていたにも関わらず、何故、トンネルにまで至ったか?
リハビリの専門家に前任者がどういう風にセットしていたかを説明し、間違い点を聞いたみた。
答えはかんたんだった。
「痛い部分ができると、そこに触れないようにクッションを配置するのはわかるが、その場合、2時間おきに体位を変えてやらないといけない。それをせずに、寝返りなどができないようにクッションなどで固定すると、集中して血行障害が起きる場所ができ、そこが褥瘡になってしまう。」
ということだった。
要は、放ったらかしのケアなのに、動けないようにしてしまっていた人災ということだった。やはり無知は恐ろしい。

うちに来てからも、メーカーは違うかもしれないが、自動圧力調整のエアマットを使っている。ただし、固定はしないで、自由に動けるようにしている。
さらに、カロリー添加のための胃瘻注入剤にプロテインなどの栄養を加えて、筋肉の復活を狙った。筋肉が復活すると、自然にごそごそと動く。
体は正直なもので、トンネルは消え失せた(2枚目の写真)
このトンネルは深さが5cm近くあった(1枚目の写真)ので、1年近くかかった。

一番大事なことは寝たきりにさせないこと。

そのためには、栄養をしっかり摂らせて、体を動かすように仕向けることが大切だと確信する。

もしも寝たきりになってしまったら、血行不良になる箇所をできる限りなくすことが大事。ずっと介護するのも手ではあるが、やはり専用の機器をレンタルするのが良いと思う。

介護する側にも人生があるから、どちらも同じように人生の時間を大切にして欲しいと思う。

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